2023年7月16日に、外来カミキリバスターズ1回目のイベントを開催しました!チーム結成後初のイベントということで、不安もありながら当日を迎えました。
このブログでは活動報告をしていきます。
今回の採集イベント内容
今回のイベントは福島県郡山市と天栄村において、サビイロクワカミキリを採集するというものでした。
日本での被害木はイヌエンジュという木です。すでに被害が報告されている4か所の造林地などをまわり、脱出してきた成虫の捕獲に挑みます。
スタッフ、参加者あわせて21名で、東京や茨城、群馬、栃木など県外からご参加いただいた方もいらっしゃいました。
前日の雨で開催順延も心配されましたが、当日は思いっきり晴れ!
気温は35度まで上がりましたが、虫は活発でした。このくらいなら活動できる温度帯ってことですね。
大きな虫網を持った「昆虫採集の精鋭部隊」と現場に向かいます。
また今回のイベントにはNHKさんにも同行いただき、後日ニュースとして取り上げていただける予定です。このニュースも後日紹介しますね!
カミキリホイホイの実践
今回のイベントのひとつの目玉として、6月中に仕掛けた「カミキリホイホイ」の観察がありました。その成果をご紹介していきます。
カミキリホイホイの設置方法
こちらは本来スギカミキリに使用するものですが、そのほかのカミキリムシにも効果があるのか?という視点で、試験的に設置してみました。
気になる部分としては、
- サビイロクワカミキリはスギカミキリのように隙間に潜るような習性はない
- スギカミキリの体長(12~27mm)と比べてはるかに大きい(サビイロ:29~37mm)
この2点ですね。十分な粘着力はありますが、明らかに習性や体長が異なります。
実際に仕掛けた様子はこんな感じです。
こちらは粘着面を外側に向けています。脱出孔から出てくると樹上に登っていく習性があるので、そのときに歩いてくれればいいなと考えました。
もうひとつのパターンは幹から少し隙間をあけて、粘着面を内側に向けています。脱出孔の真上に設置しているので、すぐに潜り込んでほしいという計算です。
約1ヶ月ほど放置して、イベント当日に結果をみてみます。さて、採れているでしょうか…?
カミキリホイホイの結果はいかに…?
結論からお伝えすると、失敗です!ご覧の通り、アリまみれの地獄絵図でした…
接着面がどちらの場合でも結果は同じ。うまくはいきませんでしたね。
なかには動物に荒らされたようなトラップも見つかったので、一筋縄ではいかないみたいです。
諸々考察をして、別の記事で設置条件を変更するなどの対策を考えていきますね。切り替えて、人海戦術での捕獲に挑みます!
現地の被害状況
当然のように、現地では脱出孔、フラス、産卵痕が数多く見られました。
まずは脱出孔です。直径1㎝ほどの綺麗な円形の孔が無数に開いていました。ここから成虫が出てきて樹上に登り、やわらかい枝先を食べていきます。
こちらはフラスです。幼虫が樹木をかじったときに出てくるもので、木の中で成長していることを意味しています。
このような繊維質なフラスが大量に出てきており、改めて繁殖力の高さを実感しました。
比較的目線の高さに集中していますが、地面から3~4mのところでもフラスが出ている木もあります。特に太い幹の木ではフラス・脱出の数も多いので、注意してみていくことになります。
最後にサビイロクワカミキリの卵です。白っぽいマウンドの中に1~2個の卵が入っています。
むやみに産卵するのではなく、ひとつひとつの孵化率を高めて子孫を残すような仕組みですね。
幸い産卵痕は目立つので、卵の状態で駆除することもできます。
日中サビイロクワカミキリの成虫は、葉の裏で細枝をかじって過ごしています。つまり基本は見上げた状態で採集することになるので、常にシルエットで探すことが多いです。
実際に採集者の目線で見ると、画像のように“黒い塊”が見えるかどうかで判断することになります。
触角が見えればわかりやすいですが、下枝の高い木も多いので慣れないとなかなか見つけにくいです。
採集の結果
採集の結果はというと、計4時間程度の採集で250頭もの成虫を捕獲することができました!
さすが「昆虫探し」の目に慣れているみなさん。圧倒的なスピードで捕まえてくれました。
この虫網の中にいるものが、すべてサビイロクワカミキリです。
採っている我々としては楽しいものでもあるのですが、被害状況としては最悪と言っていいほどなんですよね…
私も写真撮影を行いながら歩いていましたが、メンバーが枝を揺らした周辺を見て回るだけで、無数のサビイロクワカミキリが降ってきました。
最も被害がみられた場所では、わずか数分でこの有様です…
飛行能力も十分に高い昆虫なので、柄の短い虫網をお持ちの方は苦戦されていました。本格的に捕まえるなら、柄の長さが5mを超えるような大型の虫網が必要そうです。
それでも、今回は21名での捕獲チャレンジです。みなさんの連係プレーで、お子さんでも捕獲することができました!
サビイロクワカミキリを初めて見るということで、雌雄の見極め方も伝授しました。
外来種ではありますが、このようなきっかけでより一層昆虫に興味を持っていただけると嬉しいですね。イベント主催者としてもなによりです。
このあと冷却スプレーなどで成虫は〆て、拡散しないように徹底しました。各々標本にするということで、良いサンプルが採れたと思います。
さいごに
今回は外来カミキリバスターズ結成後初のイベント開催ということで、いろいろと不安な部分はありながらも成果を出すことはできました。
参加者の皆さんから頂いたアンケートでは非常に好評でしたが、まだまだ改善できること、成果を出すことはできると感じています。
しかし、現地の被害は深刻であるものの、何か画期的な施策があるわけではありません。結局、人海戦術での捕獲に勝る方法がないのも事実です。
また、私たち外来カミキリバスターズのメンバーは、昆虫を専門に扱ってきているわけではありません。
それぞれ本職を持ちながらも、「福島の自然や産業を守らなくては」という気持ちひとつで集まった仲間です。
だからこそ、虫屋さんや環境保全に関するお仕事をされている皆さんのお力がなければ、”外来御カミキリ三家”の脅威を止めることはできないでしょう。
私たちはあくまでも「活動のきっかけ」を作るに過ぎないと感じています。
今後も外来カミキリバスターズの活動にご賛同いただける方からのご支援をお待ちしておりますので、ご興味・ご関心のある方はぜひご連絡ください。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。