ヤマモミジで見つかった穿孔
2023年5月16日、福島県内での現場作業中。ヤマモミジに怪しい穿孔(木に開けられた穴)を発見しました。
その画像がこちら↓
真ん中に黒っぽい穴が開いているのが見えると思います。これはキツツキが開ける大きさではないので、間違いなく昆虫の被害です。
状況を詳しく解説すると、以下のとおりです。
- 穿孔の大きさは直径1.5mm~2.0mmとかなり小さめ
- 樹種はヤマモミジで、穿孔の位置は地面から約2m
- フラス(昆虫がかじった木くず)は発見されず、穿孔も今年できたものとは言いにくい
この木で見つかった穿孔はひとつだけだったので、何らかの昆虫が大量発生しているわけではなさそうです。
樹勢も弱っているわけではなく、早急に対策が必要なほどの被害ではありませんでした。
ツヤハダゴマダラカミキリの穿孔の特徴と今回の結果
今回見つけた穿孔の状況を踏まえて、ツヤハダゴマダラカミキリ(以下ツヤハダ)の穿孔を見てみましょう。
上記の画像はツヤハダの成虫が産卵時に残した痕です。穿孔がいつできたのかによって見た目は変わってきますが、丸い孔が開いている点では似ているように感じます。
ただし結論としては、ヤマモミジの穿孔はツヤハダが開けたものではないでしょう。その理由として以下の2点が挙げられます。
- ツヤハダの脱出孔は直径1.0㎝~1.5㎝なので大きさが圧倒的に異なる
- ツヤハダの穿孔は正円に近いのに対し、今回のものはやや楕円形になっている
穿孔の直径が1mm程度だとカミキリムシは脱出できないので、ツヤハダの被害ではないと評価できます。
上記の画像は産卵痕ですが、脱出孔も大きさ・形に大きな違いはありません。ツヤハダが侵入した場合は1mmの穿孔を開けることはないので、このような結論に至りました。
また脱出孔の形についてですが、楕円形の穿孔を開ける傾向があるのは「タマムシ」や「コメツキムシ」です。今回は大きさの観点から「キクイムシ」の仲間ではないかと想定しますが、判断基準にできるひとつの要素となります。
ヤマモミジを食害する可能性はあるものの、「穿孔の大きさや形」で振り分けていれば、大まかな見分けは付きそうですね。
まとめ
ヤマモミジに開けられていた穿孔は、ツヤハダのものではありませんでした。しかし害虫駆除は早期対策が大切なので、食い荒らされる前の段階から手を打つ必要があります。
もし今回の穿孔がツヤハダであれば、周囲に100匹程度の幼虫が潜んでいてもおかしくありません。繁殖可能な雄雌が1匹ずつ侵入するだけで、被害は爆発的に広がってしまうのです。
そのため福島全域を調査するには、皆様のお力が必要です。これからも外来カミキリに関する情報を随時お届けしていきますので、同様の被害がある樹木を見つけた方はぜひご一報ください。